為政者にとって”安上がり”な集団的ナルシシズム |
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2016年 11月 17日
<為政者にとって”安上がり”な集団的ナルシシズム> (ナルシシズムを考える④) 不満な多くの人びとに満足を与えるため集団的ナルシシズムを育てることは、社会的財政の見地からは非常に安上がりな方策と言える。 実際それは人びとの生活水準を上げるのに必要な社会的出費に比べるとほとんどタダに等しい。 社会はただ、社会的ナルシシズムを生み出すスローガンを造るイデオローグたちに金を払えばよい。 それどころか社会的な役割を演じる多くの人たち、たとえば教師、ジャーナリスト、牧師、大学教授らが、報酬すらなしで(少なくとも金銭的な報酬を求めることもなく)手を貸してくれる。 彼らはこのような立派な大義名分のために奉仕しているということに誇りと満足を覚えることで、そして彼ら自身の威信は高まり集団の中では昇進することで報酬を得ているのである。 自分が属する集団に対してナルシシズムを持つ人びとは、個人的なナルシシズムと同じようにその集団的ナルシシズムが傷つけられることに敏感であって、彼らの集団に対して加えられたいかなる危害に対しても、激しい怒りをもって反作用する。 どちらかと言えば、集団に対してナルシシズムを持つ人びとの方が、より強く、意識的に反作用する。 個人の場合は精神的にひどく病んでいるのでなければ、自分の個人的なナルシシズムのイメージについて少なくともいくらかの疑いを抱くだろう。 これに対して集団の一員である場合には、彼のナルシシズムは多数の者が共有しているので、それについて何の疑いを持つこともない。 お互いの集団的ナルシシズムに挑戦する集団同士に争いが起これば、この挑戦そのものがそれぞれの集団の中に強い敵意をかきたてる。 自分自身の集団のナルシシズム的イメージは最高点にまで高められ、相手の集団に対する低い評価はどん底まで沈んでしまう。 自分が属する集団は、人間の尊厳、品位、道徳、権利を擁護する者となる。 相手の集団は悪魔的な性質を持っているとされ、油断はならず、無慈悲で、残酷で、根本的に人間ではないとされる。 集団的ナルシシズムの象徴となるもの、たとえば旗であるとか、皇帝・大統領・大使などの人格を一つでも汚したら、人びとは激しい怒りと攻撃の反作用を起こして、彼らの指導者が戦争という手段に訴えることになっても、それを進んで支持するようになる。 集団的ナルシシズムは人間の攻撃性を呼び起こす最も重要な源泉の一つなのである。 (『破壊』参照)
by omoinoha
| 2016-11-17 07:11
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