ウォルフレンを読む(2) 「物事は変われば変わるほど、ますます同じであり続ける」 |
ウォルフレン・著 『日本/権力構造の謎』 序文
<本書執筆の動機>
有名なフランスの諺がある。
「物事は変われば変わるほど、ますます同じであり続ける」
これまでの日本の長い歴史において、日本の権力構造の基本的な性格はずっと変わっていない。
そしてそれらが日本の人びとの日常生活に及ぼす影響もずっと変わらない。
日本人は昔と同じようにいまも社会の制度に服従し、同じ統治のされ方で支配されている。
個人には自由があるようでほんとうの意味での自由はない。
個人が個として自立することが阻まれ、個性の芽はつぶされ、自由に生きること自体が抑圧されている。
そもそも日本人は個人が個として自由を望むというようなことがないように”飼育”されている。
それでももちろんこれから変化する可能性と希望はある。
日本人がこの国の真実の姿に気づいて民主主義の可能性を現実のものとすること。
日本がほんとうの意味で民主国家となること。
そして人びとがこれまでの生活よりもっと酬いられる生活を送ってほしい。
それがウォルフレンの願いであり、本書が執筆された動機である。
<なぜ権力について書くのか?>
(答え) 権力の他に何があるというのか。
社会的制約を受ける人間の経験のなかで心の最も奥深くまで達する営為について書こうとするのであれば、まず第一に書くべきは権力の他になにもない。
ものごとについて徹底的に考えはじめたら、「われわれは誰に従うべきか?」、「われわれは何に従うべきか?」という命題をさしおいて、根本的な問題は他にない。
この問いへの答えによって、私たちの社会は規定される。
さらに、この問いにどう答えるかは、私たちが自分の思考や感情の意味をどうとらえ、構築していくかという問題と分かち難く結びついている。
日本では権力を徹底的に考えることが、ひどくおろそかにされてきた。
正しい社会秩序を見出すことは人間の基本的な命題である。
この命題に対する日本人の解答は何か?
それを理解するためにウォルフレンは権力について書いたのである。
-----