ナルシシズムは克服されるべきものであり、自己愛は獲得されるべきもの |
エーリッヒ・フロムが述べるその複雑な違いを理解するために、以前ブログを書きました。
http://omoinoha.exblog.jp/15788108/
ナルシシズムというのは、「自分のことにしか関心がない」という性向で、
未成熟な人間の病理的な特徴です。
つまりナルシストには他者が存在しません。
これに対して成熟した大人は、自分のことにも関心があり、他者に対しても関心があります。
自己を愛する能力を獲得し、その愛する能力によって他者をも愛します。
「ナルシシズム」は「自己愛」と訳されていて、この二つが同じものであると信じられていますが、
「自己愛」という言葉が真実の愛を表す意味で使われているとするなら、
この二つは実は正反対のものです。
自分を大切にして自己を愛する能力(=自己愛)は獲得すべきものであり、
自分のことにしか関心がないナルシシズムは克服すべきものです。
ナルシシズムを克服した人は、「自分だけの世界」という殻を抜け出し、
他者が存在する広い世界を心の中に獲得しています。
ナルシストというのは自分だけの世界の住人で、その世界がすべてだと信じています。
他人は自分と同じようにものごとを考え、同じようにものごとを感じると信じています。
ナルシストは、他者が自分とは違う別の人間である、ということが理解できません。
彼の心の世界には自分の価値観しか存在しません。
他者が存在する広い世界は、自分で気づく以外には見いだすことはできません。
ナルシストにとって他者が存在しないということは、
ナルシストには社会の少数の人びとが考えていることが理解できないということです。
だからナルシストが権力を持つのは恐ろしいことだと思います。