「怒る」と「叱る」の違い<非心理学者が語る心理学ー7> |
つまり、怒っている人(叱っている人)の無意識の内に、相手に対する「敵意」(憎しみ)の感情が含まれている否かが、この二つの違いの本質です。
怒る = 怒っている人の無意識に、相手への敵意(憎しみ)がある
叱る = 叱っている人の無意識には、相手への敵意(憎しみ)はない
「人は相手の無意識に反応する」
これはオーストラリアの精神科医ベランウルフの言葉だそうで、加藤諦三先生が引用されていますが、怒ることと叱ることの違いを理解するために役立つ言葉です。
「怒り」には相手への敵意が含まれているのです。相手の人格に向けた憎しみが隠されている場合もあります。だから怒られた人にも不満や憎しみの感情が生じるのです。
純粋に「叱る」ことには敵意の感情は含まれていません。
(あえて「純粋に」と言ったのは、実際には「怒りを込めて叱っている」ことも頻繁にありうることだと思うからです。)
純粋に叱っている人の無意識には、敵意や憎しみの感情はありません。
例えば間違えたその事実を指して叱っています。
ですから叱られた人は、どんなに厳しく叱られても不満や憎しみの感情は生じません。
叱られることで自らの成長さえ実感できることもあるのです。
相手のことを思って本気で叱ることは愛の表現でさえあります。
人が育つためには、時には叱られることも必要なのです。
誰でも怒ることはできます。
しかし本気で人を叱ることができるかどうかは、実は叱る側の能力の問題です。
実際、相手の成長を願って本気で叱ることのできる親や上司が、今の社会にどれだけいるでしょうか……