1Q84 ひとりぼっちではあるけれど孤独ではない |
そしてこの「ひとりぼっち」と「孤独」という1Q84のタイトルも、実は自立と依存という重要なテーマに関係している。
だが僕は「孤独」と「孤立」という言葉について、村上春樹氏とは別の理解をしているようだ。
僕が理解する“孤独”とは、たとえ一人であっても何かに繋がっている状態のことである。
これに対して“孤立”とは、何ものとも繋がりが切れていてなお一人の状態のことである。
だから人は“孤独”には耐えられるが“孤立”には耐えられない。“孤独”と“孤立”の違いはとてつもなく大きい。
そして孤独に耐え一人でいられる能力は人間が獲得すべき大切な能力である。
エーリッヒ・フロムは「一人でいられる能力こそ愛する能力の前提条件」であると述べている。
“孤独”に耐えることのできる人間でなければ人を本当に愛することはできない。しかし“孤立”している人間は人を愛せない。
「私は孤独じゃないと思う」と青豆は告げる。半ばタマルに向かって、半ば自分自身に向かって。
「ひとりぼっちではあるけれど、孤独ではない」 (1Q84 Book3 P48)
このシーンを僕はこう読んでいた。
「私は孤立していないと思う」・・・「孤独ではあるけれど、孤立はしていない」
(八嶋聡)