フロム『悪について』を読む(2) |
愛と悪、光と影の対比。
『愛するということ』の主題
・人間の愛する能力
『悪について』の主題
・人間の破壊性
・ナルシシズム
・近親相姦的固着
フロム『悪について』を読み進める。
(要旨)
悪はわれわれすべての人間の内部に存在する。
われわれがそれを自覚すればするほど、われわれは人を裁くことはできなくなる。
人は誰でも心の奥底に、悪の部分を隠し持つ。
善悪二元論の立場からすればそれは受け入れ難いことかもしれない。
しかし人は誰でも自分の内部に悪が存在するという事実、その悪に気づくことにより、善を選択することの自由を得る。
(生命に無関心となってしまった現代人)
私たちが生きるこの社会は、機械化が急速に進み、目覚ましい勢いで近代化が進展している。
一方、人びとの感情は一般に元気を失い、人間はあたかも物体に変貌してしまったかのようである。
その結果、人間は不安に満ち、生命に対して全く無関心になっている。
それどころか、生命に対して憎悪を抱いているかのように思えることさえある。
1.人間---狼か羊か
(人間の本性について)
人間は羊なのか、それとも狼なのか?
人間の本性は善なのか、それとも悪なのか?
<フロムは直接答えを示さないが、その答えを要約するならば、>
人間の本性は善でもあり、悪でもある。
人間は羊でもあれば、狼でもあり、羊でもなければ、狼でもない。
人間はそもそも矛盾した存在である。
すべての人間には善の部分もあり、悪の部分もある。
すべての人間の内部には悪が存在するというその事実に気づくことで、人間は善を選択することの自由を得る。