生と死は同一のものとしてわれわれのうちにある(ヘラクレイトス) |
『ノルウェイの森』(村上春樹・講談社P46)
死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
『愛するということ』(エーリッヒ・フロム P114)
ヘラクレイトスは、反対物の葛藤こそがあらゆる存在の基盤であると考えた。
彼はいう、
「すべてを含む『一者』が、矛盾を抱えながら、どうしてそれ自身と一致するのかを、彼らは理解しない。そこには、弓や琴にみられるような矛盾する調和があるのだ」。
あるいはもっとはっきりと、こう言っている。
「われわれは同じ河に入っていくのでもあり、入っていかないのでもある。われわれは存在するのでもあり、存在しないのでもある」。
あるいは、こうも言っている。
「生と死、覚醒と睡眠、若年と老年は、いずれも同一のものとしてわれわれのうちにある」。
『シッダールタ』(ヘッセ・新潮文庫P150)
あらゆる罪はすでに慈悲をその中に持っている。
あらゆる幼な子はすでに老人をみずからの中に持っている。
あらゆる乳のみ子は死をみずからの中に持っている。
死のうとするものはみな永遠の生をみずからの中に持っている……
人間が死と生についての考えをつきつめていくと、誰しもが同じような思いに行きつくのであろうか。