『神様2011』(川上弘美) 作者の静かな怒り |
『神様』と『神様2011』が両方とも収録されている。
その二つの物語は、まるで違った二つの世界を描き出している。
その対比が悲しい。
作者のあとがきが涙を誘う。
「(天然ウラン)238は四十五億年でようやく半数が死ぬだけなのに、(原発や原爆に使ったりするウラン)235は、たった七億四百万年で、半分が命を散らしてしまう。そしてさらに七億四百万年たつと、その半分になる……」
「たった七億四百万年……」
この一言に作者の静かな怒りが伝わってくる。
これから何を信じ、どう生きていけばいいのだろう。
そう考え込んでしまう。
目の前の現実をあるがままに受け入れて、日々を生きていくしかないのだ。
作者の最後の言葉が少しの勇気を与えてくれる。
……静かな怒りが、あの原発事故以来、去りません。
むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。
今の日本をつくってきたのは、ほかならぬ自分でもあるのですから。
この怒りをいだいたまま、それでもわたしたちはそれぞれの日常を、たんたんと生きてゆくし、
意地でも、「もうやになった」と、この生を放りだすことをしたくないのです。
だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。
この言葉をいまゆっくりとかみしめているところである。